総コレステロール(TC)の変動は心血管および脳血管疾患の危険因子として示唆されているが、長期的なTCの変動と認知症発症との関連は評価されていない。そこで、TCの変動と認知症の関係を調べるために40~79歳の131,965名の韓国人を対象に8.4年間追跡したコホート研究を行った。
研究方法
TCは健康診断で3~6回測定され、変動性は3つの指標〔TC-variability independent of the mean(VIM)、TC-CV、TC-SD※〕を用い、それぞれ4つの集団(4分位群)に分けた。認知症は、2008年1月1日~2015年12月31日までに新たに診断された全ての原因による認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)を主な結果とした。
※VIM=100×SD/平均β。βは平均の自然対数に対するSDの自然対数に基づく回帰係数。CV=SD/平均×100(%)。
研究結果
TC変動の最低四分位群と比較して最高四分位群では(TCの変動幅が大きいほど)、全ての原因による認知症のリスクが増加することが示された。また、VIM、CV、SDで測定されたTC変動性では、TC変動性の最低分位群と比較した最高4分位群の全ての原因による認知症発症のハザード比はそれぞれ、1.15、1.20、1.12だった。さらに、TCの変動性はADの有意義な予測因子としても特定された。
平均TCとは無関係にTCの変動性が高いことは、全ての原因による認知症およびADのリスクの増加と関連している可能性があります。