喫煙は認知症や認知機能低下と関連があると言われている。そこで、喫煙と禁煙および認知症や認知機能低下との関係を調べるために、アメリカのAtherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究に参加した52~75歳の13,002名の男女を対象に前向きコホート試験を行った。
研究方法
全ての原因による認知症は、縦断的認知データ、代理レポート、病院および死亡診断書の認知症コードを組み込んだ標準化されたアルゴリズムを使用して定義された。認知機能低下は、2つの時点(1996年~1998年および2011年~2013年)で測定された3つのテスト〔遅延単語想起(記憶)、単語流暢性(言語)、数字記号置換(実行機能/注意)〕から作成された複合認知スコアを使用して測定し、喫煙と禁煙の状態は、1987年~1989年(訪問1)と1996年~1998年(訪問4)のデータを使用した自己報告によって定義された。また、中年期の喫煙パターンを把握するために1996年~1998年(訪問4)をベースラインとした。
研究結果
1347人(10%)の参加者がフォローアップ中に認知症を発症した。最近の禁煙と現在の喫煙は全て原因による認知症リスクの増加と用量依存的に関連し、喫煙しない場合と比較した場合の「現在の喫煙の全ての原因による認知症」のハザード比は1.33であり、「最近の禁煙(ベースラインの9年前未満)」のハザード比は1.24だった。また、9年以上前に禁煙した人は認知症リスクの増加は認められず、認知機能低下の割合は喫煙状態によって差がなかった。
認知症のリスクを減らすためには、喫煙者は中年期の早期禁煙が重要な可能性があります。