認知症の治療法はまだ確立していないため、認知症研究の焦点は徐々に予防戦略に移ってきている。そこで、アポリポ蛋白質(APOE)ε4対立遺伝子を基にした遺伝リスクが高いまたは低い人の、中年期および晩年期における認知症と軽度認知障害(MCI)の予測精度を調べるために中年期:1,024名および晩年期:604名を対象に約30年間追跡して「Lifestyle for BRAin Health(LIBRA)」スコア測定を実施した。
研究方法
参加者は参加時と約30年後の2回調査を受けてLIBRAスコア測定と認知機能評価が行われ、APOE遺伝子型も調べられた。LIBRAスコアは12の修正可能な危険因子(冠状動脈性心臓病、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、うつ病、肥満、喫煙、身体活動の欠如、腎疾患)と保護因子(低から中程度のアルコール飲用、高い認知活動、健康的な食事)で構成され、スコアが高いほどリスクが高いことを示す。認知状態は3段階のプロトコル(MMSEによるスクリーニング、臨床、および鑑別診断段階)で評価され、MCIと認知症の診断は確立された基準に基づいて行われた。
研究結果
中年期のLIBRAスコアが高いと認知症リスクが高くなることが有意に関連し、MCIリスクも高くなったが、APOEε4保因者との間には有意な相互作用はなかった。また、晩年期のLIBRAスコアは認知症と有意な関連はなかったが、MCIリスクとは有意に関連し、APOEε4保因者との間にも有意な相関が認められた。
LIBRAスコアは、MCIと認知症の発症予防のための教育および動機付けに役立つ可能性があります。