白質高信号(WMH)は、加齢に伴う脳血管病変を表すと考えられ、また、ビタミンDの血清レベルが低いことは脳血管障害の危険因子であり、アルツハイマー病患者の認知機能低下に関連するWMHの発症に関わっている可能性がある。 そこで、60歳以上の軽度アルツハイマー病患者146名(平均年齢79.1歳)を対象に、軽度アルツハイマー病患者の認知機能と白質高信号(WMH)に対するビタミンDレベルの影響を調べた。
研究方法
認知機能はMMSEを、認知症の重症度は臨床認知症評価によって決定した。さらに、短期記憶、言語機能、実行機能、注意記憶、作業記憶も評価した。WMH量についてはMRI画像から計算し、ビタミンDレベルは血清25(OH)Dを測定した。
研究結果
血清25(OH)DレベルとWMH量は有意に負の相関を示し、25(OH)DレベルとMMSEスコアは有意に正の相関があった。 しかし、MMSEを従属変数、血清25(OH)DレベルとWMH量を独立変数として機能する線形回帰モデルの場合ではMMSEスコアは血清25(OH)Dレベルと有意に正の関連があったが、WMH量との関連は示されなかった。また、3つの回帰モデルの結果と組み合わせると、血清ビタミンDレベルが低いほどWMH量が多くMMSEスコアが低くなるが、WMHは血清ビタミンDレベルとMMSEスコアの間に仲介効果はなかった。
血清25(OH)Dレベルの低下は、軽度アルツハイマー病患者のMMSEスコアの低下と関連していたが、根本的なメカニズムはWMHに起因するものではなく、別の病態メカニズムの存在が存在することが示唆されました。