嗅神経を介して広がる嗅覚刺激は大脳辺縁系および視床下部に伝達されるが、大脳辺縁系は認知障害と密接に関連している海馬と扁桃体を含む領域であり、嗅覚刺激によって認知障害の改善が期待できる可能性がある。そこで、36名のアルツハイマー型認知症患者を対象に、杉からのアロマ成分を添加した消毒エタノールを用いて8週間介入を行い、嗅神経刺激により認知症の症状が改善するかを検討した。
研究方法
杉からのアロマ成分はルームフレグランスとスプレーの2種類用意し、ルームフレグランスは居住空間(居間と寝室)に配置した。スプレーは患者の衣類や寝具をミストするために1日に数回使用された。介入群19名とコントロール群17名はランダムに割り当てられ、開始時と4週間および8週間での認知機能および行動機能の評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)、Japanese version of the Zarit Caregiver Burden interview(J-ZBI)、Alzheimer's Disease Assessment Scale‐cognitive subscale(ADAS-cog)を用いた。
研究結果
介入群はコントロール群と比較して4週目と8週目のNPIとJ-ZBIの有意な改善が認められた。しかし、ADAS-cogでは有意な差は認められなかった。
杉の香りはアルツハイマー病患者の周辺症状を改善し、介護負担を軽減する可能性があります。