過去の臨床試験では、アルツハイマー型認知症予防のためのドコサヘキサエン酸(DHA)サプリメントの使用量は少なく、ほとんど効果が見られなかった。そこで、大量のDHA補給が脳に与える影響について、33名の認知症でない高齢者を対象に行われた6か月間の無作為化プラセボ対照比臨床試験。
研究方法
対象者はAPOE遺伝子タイプが調べられ、ビタミンB複合体(ビタミンB12:1㎎、ビタミンB6:100㎎、葉酸:800 μg)が毎日提供され、1日あたり2,152 mgのDHAサプリメントまたはプラセボを摂取した。なお、MRIにて脳脊髄液(CSF)DHAレベル、CSF EPAレベル、海馬の体積、嗅内皮質の厚さの変化を、脂肪酸はCSFと血漿の濃度を調べた。
研究結果
DHA補給後の血漿とCSFのDHAとEPAレベルはプラセボ群と比較してDHA補給群で有意に増加したが、血漿DHAが200%増加したのに対してCSF DHAの増加は28%だった。APOE4保因者と非保因者の間の比較では、CSF EPAレベルの変化は保因者と比較して非保因者で有意に大きかったが、CSF DHAレベルや血漿DHA、EPAでは有意差は見られなかった。また、DHA補給群とプラセボ群の間で海馬体積、嗅内皮質の厚さに有意差はなかった。
オメガ3系脂肪酸の補給は認知機能低下を遅らせない可能性はありますが、特にAPOE4キャリアにおいては適切な脳輸送を確保するために高用量のオメガ3系脂肪酸(1日あたり2 g以上)が必要であることが示唆されました。