軽度の運動によって記憶力が向上することが示されているが、海馬機能の改善に最も効果的な運動は明らかにされていない。そこで、軽度の運動が海馬の記憶機能に及ぼす影響や、これらの変化の正確なメカニズムを調べるために、健常の若齢成人36名を対象に超低強度運動による実験を行った。
研究方法
実験1では、10分間のペダリングによる超低強度運動の約5分後に記銘課題に取り組み、コントロールは運動の代わりに座位安静の後に記銘課題を行った。そして、その約45分後に再認課題を行い類似刺激弁別指数(LDI)を算出した。実験2は、実験1と同様の手順だったが記銘課題と再認課題はMRI装置の中で行われた。
研究結果
超低強度運動ではコントロールと比較して、高類似度および中類似度の類似刺激でLDIが有意に高かった。コントロールと比較して超低強度運動で、歯状回/CA3とCA1および鉤状回を含む海馬サブフィールド全体が高いレベルで活性化し、内耳皮質および傍海馬皮質においても同様の増加が観察された。また、歯状回/CA3と角回、紡錘状回、海馬傍回が活性化した人ほど記憶課題の成績が大きく向上した。
超低強度運動を行うことで海馬の記憶機能が向上する可能性があります。