欧米でのメタアナリシスでは、魚の摂取量に地域差があり、追跡期間が短いことから魚摂取と認知症リスク低下との関連性が明確に示されなかった。
そこで、魚介類摂取量が欧米より多い日本人において、中年期の魚介類とn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取量が後年の認知症のリスクとどのような関連がみられるかを調査した。
研究方法
人口ベースのコホート研究にて、1,127人の参加者(1995年に45〜64歳)の食物摂取頻度(1995年と2000年の平均摂取量)と認知症(2014年から2015年)を評価した。
ロジスティック回帰分析を使用して、認知症および軽度認知障害(MCI)診断のオッズ比(OR)を計算した。
魚介類・ドコサヘキサエン酸(DHA)・エイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサペンタエン酸(DPA)について、摂取量が最も少ないグループ(中央値56mg/日)を基準とし、中間(1、2番目)、最も多いグループ(中央値82g/日)を3番目として評価した。
研究結果
結果、魚介類では1番目(OR = 0.43(95%CI = 0.20–0.93))、2番目(OR = 0.22(95%CI = 0.09–0.54))および3番目(OR = 0.39(95%CI = 0.18–0.86))となり、摂取量が増えるほど認知症のリスクが大幅に低下したことが観察された。同様の結果がDHA・EPA・DPAでもみられた。
MCIについて、魚介類・n-3系脂肪酸の摂取量との関連は見られなかった。
結論
中年期の魚の大量摂取は認知症の予防に役立つ可能性があるが、本研究では認知機能評価を1度しか行っていない。今後は食事の変化を加味し一般集団を対象としたさらなる研究が必要である。
多目的コホート研究からの成果報告
魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸摂取と軽度認知障害・認知症との関連
国立がん研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ