深い睡眠である徐波活動(SWA)は健忘性軽度認知障害(aMCI)の人々で減少するが、ゆっくりとした振動の音響刺激は若年および高齢者のSWAと記憶を強化するのに効果的であると言われている。そこで、睡眠中の音響刺激がSWAを高めてaMCIを持つ人々の記憶能力を改善するかどうかを調べるために、62~86歳(平均年齢72歳)のaMCI高齢者9名を対象に無作為化クロスオーバー偽対照研究を行った。
研究方法
参加者は1回の訪問中に音響刺激(1/fゆらぎを持ったピンクノイズ)を受け、もう1回の訪問中にみせかけの刺激(シャム刺激)を受けた。習慣的な睡眠時間の90分前に単語ペア学習タスクと2つの手がかり記憶テストを行い、習慣的な睡眠時間には消灯して少なくとも8時間の睡眠時間を与え、その間の睡眠をポリソムノグラフィーでモニターした。そして、起床後1時間後に主観的な睡眠の質と覚醒度の質問票に記入し、続いて朝の単語想起テストを行った。
研究結果
SWA帯域の中でも遅い振動であるSO活動とSWAは、シャム刺激と比較して音響刺激でそれぞれ15.1%と11.4%増加し、音響刺激によって9名のうち5人で単語想起の数が増加した。また、SWAの増強と記憶力の間には有意な関連があった。
睡眠中に音響刺激を行うことは、aMCI患者のSWAの増強に効果的である可能性がある。