マウスによる研究では成熟したホップの苦味酸(MHBA)の投与は認知機能とうつ病を改善すると報告されている。そのため、認知機能低下が認められた健康な高齢者98名を対象に認知機能と気分状態に対するMHBA補給の効果を無作為化二重盲検プラセボ対照試験によって調べた。
研究方法
参加者を2つのグループに分け、1つのグループには35mgのMHBAを、もう1つのグループには35mgのデキストリン(プラセボ)を12週間毎日摂取させた。「注意」に関してはClinical Assessment for Attention(CAT)とThe Symbol Digit Modalities Test (SDMT) を、「記憶」についてはRey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)とS-PAとウェクスラー記憶検査改訂版(WMS-R)にて評価し、「ストレスレベル」は唾液中の唾液β-エンドルフィン、コルチゾール、クロモグラニンA(CgA)、α-アミラーゼを調べた。また、「不安状態」はState-Trait Anxiety Inventory (STAI)-FormX-2 を、「主観的認知機能」は Metamemory in Adulthood Questionnaire (MIQ-A)を、「眠気」はKarolinska Sleepiness Scale-Japanese version(KSS-J)を使用し、「MCIのマーカー」として血清中のトランスチレチン(TTR)、アポリポプロテインAI(ApoA1)、補体3(C3)を評価した。 さらに、主観的認知機能の状態により2つのグループ〔医療支援を求めていない知覚的主観的認知機能低下(SDC-P)と医療支援を求めている臨床的主観的認知機能低下(SCD-C)〕に分け、サブグループ分析も行った。
研究結果
MHBA摂取グループはプラセボ群と比較して12週目のSDMTスコアが有意に高く、12週目のβ-エンドルフィンが有意に低く、血清TTRは有意に高かった。サブグループ分析では、12週目のSDMTスコアはプラセボ群と比較してMHBA群で有意に高く、試験開始時から12週までのS-PAスコアとRAVLT(T6-T7)はコントロールと比較してMHBA摂取グループで有意に高値を示した。
MHBAの摂取によって高齢者の認知機能、注意、および気分状態が改善させる可能性があります。