認知症の回避に役立つ栄養素があるのかについては、「基礎からわかる軽度認知障害」という本の中にわかりやすくまとまった表があります。
著者:鈴木隆雄 島田裕之
出版社:医学書院 (2015/4/9)
この本を見ると、ビタミンB12、葉酸、オメガ3系脂肪酸にビタミンE、ビタミンC ビタミンDといった栄養素が並んでいます。
栄養素 | 摂取基準 | 観察研究 | 介入研究 | |
---|---|---|---|---|
男性(70歳以上) | 女性(70歳以上) | |||
ビタミンB12 | 2.4μg/日 | 2.4μg/日 | 横断研究などでは認知機能との関連性を認める。 | ビタミンB12投与による認知機能改善効果はなかった。 MCI者に対してビタミンBを投与したがQOLに変化なし。 |
葉酸 | 240μg/日 | 240μg/日 | 横断研究などでは認知機能との関連性を認める。 | 健常高齢者への葉酸投与は効果なし。認知症者への投与によってIADLが改善したが、認知機能は改善せず。 |
ω3系脂肪酸 | 2.2g以上/日 | 1.8g以上/日 | コホート研究によって、ω3系脂肪酸の摂取量と認知機能低下との関連性が示唆されている。 | ω3系脂肪酸の介入研究では有意な認知機能の改善を認めていない。 MCI者を対象とした介入研究によって、EPA及びDHAの摂取はともにうつ傾向を改善させた。 |
※EPAとDHAを均等に摂取するのが望ましい | ||||
ビタミンE | 7.0mg/日 | 6.5mg/日 | 肯定的、否定的な報告が混在するものの、認知機能との関連性は示唆されている。 | 介入研究では有意な認知機能の改善に至ったものはない。 MCI者に対するビタミンE、Cの投与によって、酸化ストレスマーカーは改善したが、認知機能に影響なし。 |
ビタミンC | 100mg/日 | 100mg/日 | ||
ビタミンD | 5.5μg/日 | 5.5μg/日 | 横断研究、コホート研究などで、ビタミンD高濃度群で認知機能が有意に高いことが示されている。 | 介入研究では有意な認知機能の改善に至ったものはない。 |
「基礎からわかる軽度認知障害:医学書院」より
この表を見ると、すでに認知症になった方がこれらの栄養素を摂ってもあまり役立たなかったという報告があるということが書いてあります。
逆にこれらの栄養素をきちんと摂っている方は、将来認知症になるリスクが低下するという研究もあります。
まとめると、ビタミンB群、オメガ3系脂肪酸、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンDをしっかりと摂っておくということが認知症の回避にはとても役立ちそうだということがわかります。
歯の健康も大切
もう一つ認知症の回避の大きなファクターとして、歯の健康が挙げられます。
私たちは、口から入れて噛んで食べたものからできています。
口で噛んだものが下流の胃や腸にまわっていきます。ところが、虫歯や歯周病、歯が抜けいてたりすると、ちゃんと噛めずに食べられる食材も偏ってしまいます。
そうすると先ほど紹介したような栄養素をちゃんと摂れないということになってしまいます。認知症予防・認知症回避の役に立つ栄養素を摂れないということになるため、口の中の健康を維持しておくことが必要ということも分かります。
栄養を摂ること、そして歯医者さんと仲良くして口の中の健康を維持するということに注意をして過ごしたいという風に思います。
この記事の著者
東京大学工学部産業機械工学科卒業。株式会社リクルートを経て、98年「日本老化制御研究所」を擁する日研フード株式会社に入社。取締役経営企画室長、サプリメント製造子会社の代表取締役社長として活躍。
2006年「医療従事者が自信を持って使えるサプリメントを提供してほしい」との、医師、薬剤師からの要請に応えて、株式会社ヘルシーパスを設立。医療現場とサプリメント製造現場の両方を知る立場から、医療機関専用サプリメント開発メーカーの経営にあたっている。
田村忠司
株式会社ヘルシーパス 代表取締役社長