有識者インタビュー・コラム

四ツ池メディカルヴィレッジ 吉井徹哉先生の認知症への取り組み

緑の中で自然に囲まれた空間でユニークな医療を提供されておられる四ツ池メディカルヴィレッジのチーフオフィサー※・吉井徹哉先生(以下、吉井先生)に「コンセプトの『スマイルエイジング』について」「認知症に取り組まれたきっかけや現状」「認知症予防への具体的な取り組み」などインタビューさせていただきました。

※「医師免許を武器に、どんなことをしたら社会の役に立てるか?」とお考えの吉井先生は、院長ではなくチーフオフィサーと名乗られています。

写真右:四ツ池メディカルヴィレッジ チーフオフィサー・吉井徹哉先生 写真左:インタビュアー・ヘルシーパス 代表取締役 田村忠司

写真右:四ツ池メディカルヴィレッジ チーフオフィサー・吉井徹哉先生
写真左:インタビュアー・ヘルシーパス 代表取締役 田村忠司

人生を美味しく食べる「スマイルエイジング」のコンセプトとは?

人生は一回。スタートとエンドのある旅

田村
吉井先生とは、このヴィレッジがスタートする前からお付き合いいただいておりますが、改めて「四ツ池メディカルヴィレッジのコンセプト」を教えていただけますでしょうか?

吉井先生
僕がここを立ち上げようと思ったスタートが、パンフレットにもある「スマイルエイジング」って言葉なんです。

ありきたりな言い方かも知れないですけど、「人生は一回。スタートとエンドのある旅」。
つまり必ず始まりがあって必ず終りがある。致死率100%の旅なんです。

その旅をするにあたって、人は「自分の人生を一日一日食べている(味わっている)」わけです。

「だから、どうせ食べるなら美味しくしませんか?」
というのがスマイルエイジングのコンセプトなんです。
外に出かけようとする気持ちは楽しいものです。

でも、痛みがあると出かけたくないし、匂いがわからないと食事も美味しくないし、花の香りがわからないとお出かけしたくない。自分の顔に張りがないと人と会いたくない!

そうなっちゃいますよね?

だから、そんな自分から開放する医療が「スマイルエイジング」なんです。
痛みを和らげるペインクリニックがあり、鼻づまりや匂いの感じ方を改善する鼻閉嗅覚改善治療があり、人に見てもらいたいようなお肌になって、いざ出掛けましょう。
そんな医療を目指しています。

年齢とともに身体のあちこちに変化が起きてきますが、それを無理に抑えようとするのではなく、その変化を受け入れて、微笑みながら年齢と寄り添って生きていく。そんなふうに「毎日を美味しく食べていく」。それがスマイルエイジングであり、そのために医療ができる最高のサービスは何だろうかと考えているんです。

食事だとダイエットをして1日抜くということも可能ですけれど、人生の場合はそれが出来ません。
結局、1日どれだけ美味しかったの?というのが人生の積み重ねなのかなと考えています。

四角く白い建物ではなく、豊かな自然の中で、薬の代わりに「人生を楽しく生きるアドバイス」をお土産に

田村
建物が分散されている「ヴィレッジスタイル」というのはとてもユニークですよね。
最初は「まさか、ここがクリニックなの?」と驚きました。

いったい、どのような思いがこめられているのでしょうか?

吉井先生
診療の場は四角く白いビルでなくても良いと思うんですよね。
それに、クリニックというものが診断書や薬を渡される場ではなく、緑の中で自然と心が落ち着いた状態になり「人生を楽しく生きるアドバイス」をお土産に持ち帰ってもらう場にしたくてこのような形にしました。

写真:四ツ池メディカルヴィレッジ

※四ツ池メディカルヴィレッジは曳馬野の面影を残す四ツ池公園の隣に、邸宅風の診療棟を点在させたヴィレッジスタイルのクリニックです。四季を通じて豊かな自然に恵まれ、クリニックとは思えない佇まいを見せています。「公園のようにリラックスできる空間で、緑を見ながら身体も心も癒していただきたい。」そんな想いが詰まった場所です。

笑顔で年齢を重ねるためには予防も大事

吉井先生
病気になってしまうと、人生の旅を短くしてしまって、その上「病気を治すための治療」という美味しくない時間を作ってしまうことになります。それを避けるために予防は大切です。

いわゆる患者というのは、すでに病気に罹患されてしまった方という概念なんですけども、私達はそういう方だけの治療体制を考えていません。その前から始まるわけなんです。

病気になってからかかる保険医療はもちろん大切ですが、より高い生活をサポートできる、そんな医療施設になりたいというのが、うちの最初からの理念だったんです。

良質な生活を獲得し維持するためには予防医学の考え方、実行が必要です。
症状が日常に影響し始め病気となって医療機関に患者として掛かる前に予防するための確かな答えを提案する。

そして、もし疾病に罹患した場合はどこにもない高い医療を提供、提案する。
そんなコンセプトを掲げています。

写真:四ツ池メディカルヴィレッジの理念

認知症に取組むきっかけと現状

田村
認知症に取り組まれるきっかけは何かあったのでしょうか?

吉井先生
これから『認知症』って言葉が他人事じゃないと患者さんが思い始めてきた時に、それに対する答えをうちで用意しておきたいな、ということろが始まりです。

僕は特養の施設で嘱託医をやったりしていて、いろいろな患者さんを診ながら感じることとしては、認知症を意識しないグループって2つあるんです。

1つ目のグループは、生まれてから40歳くらいまでの方たち。
2つ目のグループは、認知症になってしまっている方たち。

例えば、小学生が認知症を意識するかと言ったら、ありえないですよね。
あと、おそらく40歳くらいまでは自分は認知症だなんて思ったことはないと思うんですよね。
それが1つ目のグループ。

2つ目のグループは認知症になってしまっている方たち。
「自分が認知症だ」と自覚している認知症の方はいないんですよね。

この2つが、「認知症を意識しない」グループなんです。
そして、1つ目と、2つ目の間で、「認知症になるのは避けたいな」とか「私、認知症かしら?」って意識している方をフォローしてあげたいと考えています。

また、用意したのはMCI(軽度認知障害)の血液検査、それからCQテスト。

それらを入り口として、希望される方には、当院で通常行っているMRIによる脳血管健診にプラスして、海馬の体積を測定するいう、かなり高いレベルのMRI解析まで出来るような体制にしています。

ただ、こちらから「検査を受けてみませんか?」と積極的にすすめることはあまり行なっていません。

そうではなく、既存のパンフレットや、

「うっかりがありませんか?」とか
「最近、物忘れが気になりませんか?」とか
「こんなはずじゃなかった...みたいなことが起きませんか?」などのスタッフ作のPOPを使って問いかけをします。

そして、患者さんが何を希望し選択されるのかを見守る立場で受け身でいます。

田村
関心を持たれるような情報をちりばめておいて、患者さんの反応を観察したということですね。患者さんたちの反応は、どのような感じですか?

吉井先生
「MCI(軽度認知障害)検査は気になる。」という方はいっぱいいるんです。
でも、「検査はしたくない」って言うんです。

スマイルになるためには、検査よりも、関心を高めて予防と対策をすること

田村
患者さんには「認知症が気にはなるけど、MCI(軽度認知障害)検査は受けたくない」っていう方が多いのですね。
この辺りの患者さんの行動をどのように考えておいでですか?

吉井先生
僕は、MCI(軽度認知障害)検査を絶対にしなくちゃいけないものだとは思っていないんです。

検査って、ある意味で自分を客観的に評価されてしまうものだから、患者さんにとっては怖い部分もあるんですよね。

あと、MCI(軽度認知障害)になったら治らないと誤解している人も多い。
それだと、患者を恐怖に追い込むだけで、スマイルじゃないエイジングになってしまいます。

だから、「MCI(軽度認知障害)の状態なら回復しますよ」という知識を伝えたり
「MCI(軽度認知障害)検査を受けなくても、予防や対策はしておこうね。」というふうに関心を高めるツールとして使うようにしています。

「検査はやりたい時にいつでもできる。検査しなくても予防はできる。予防や対策だけでも始めてみたら?」っていうようなお話をしちゃいます。

目的は、検査を受けることじゃなくって、患者さんが幸せになることですからね。

四ツ池メディカルヴィレッジ チーフオフィサー吉井徹哉先生

株式会社ヘルシーパス代表取締役社長田村忠司 四ツ池メディカルヴィレッジ吉井徹哉先生インタビュー

認知症予防にいいこと。先生が実際やっていること

田村
では、最後に、いわゆる認知症の予防で、先生が患者さんにおすすめしていること、それから先生ご自身がなさっていることを教えてください。

吉井先生
僕は栄養素としては、水溶性コリン(α-GPC)を摂っています。

また患者さんにも、飲むと決めたら、中途半端に「今日は飲もう、今日は飲まなかった・・・」とかではなく、3ヶ月は真面目に飲みなさい。と言っています。

あと、オメガ3系脂肪酸やイチョウ葉です。
ドイツではイチョウ葉を認知症だけでなく、脳梗塞の後遺症の治療でも積極的に使っているので、そういう意味では良いと思います。

あと、栄養素以外では、「太陽にあたれ」「よく噛んで食べなさい」ってお話してますね。
外に出ることと、咀嚼する咬筋を使うことは大事ですよって言います。

インタビューさせていただいた先生

四ツ池メディカルヴィレッジ

チーフオフィサー 吉井徹哉先生

日本臨床麻酔学会員、日本ペインクリニック学会員、日本耳鼻咽喉科学会員、日本抗加齢学会員、皮膚科光線療法学会員、麻酔指導医、ペインクリニック専門医

静岡県浜松市で豊かな自然に囲まれた公園のようなクリニックで「毎日を楽しく食べる」スマイルエイジングをコンセプトに展開。 MRIなど検査機器も充実し、より高い生活をサポートできる医療を追求なさっています。

四ツ池メディカルヴィレッジチーフオフィサー 吉井徹哉

この記事の著者

田村忠司

株式会社ヘルシーパス 代表取締役社長

日本抗加齢医学会会員。
東京大学工学部産業機械工学科卒業。株式会社リクルートを経て、98年「日本老化制御研究所」を擁する日研フード株式会社に入社。取締役経営企画室長、サプリメント製造子会社の代表取締役社長として活躍。
2006年「医療従事者が自信を持って使えるサプリメントを提供してほしい」との、医師、薬剤師からの要請に応えて、株式会社ヘルシーパスを設立。医療現場とサプリメント製造現場の両方を知る立場から、医療機関専用サプリメント開発メーカーの経営にあたっている。

-有識者インタビュー・コラム

Copyright© 30代からはじめる認知症回避プロジェクト , 2024 All Rights Reserved .